2014年7月20日

米国、次なる成長マーケット「グルテンフリー/Gluten-Free」

筆者は、米国に出向いた際にはWhole Foods, Sprout, Fresh & Easy, Trader Joe’sといった食品専門店に足を運ぶことが習慣となっている。上記の店舗では今更ながら「Organic」、「Natural」、「Gluten-free」という言葉や表示が店内の至る所で舞い踊っている。米農務省(USDA/United States Department of Agriculture)の認証オーガニックマークやGluten-Freeの認証マークはもはや当たり前、「通行手形」同然といっても言い過ぎではない。

米調査会社パッケージド・ファクト社によると、米国のグルテンフリー食品市場は2012年までの5年間に年平均28%成長し、2012の市場規模42億ドルと報告している。消費者調査では成人の18%がグルテンフリー食品の購入経験ありと答えている。2017年の市場規模は66億ドル、12年比57%増を見込んでいる。

なぜ、これ程までにグルテンフリー食品が?

近年、セリアック病※や食物アレルギー疾患への認識が高まり、「グルテンフリー食品は健康に良い」という消費者意識が購入の動機となっている。グルテンフリー食品は小麦の代わりに米粉やでんぷんを使っている。グルテンフリー商品の種類と数が増え、質の向上も相俟って、家族一緒にグルテンフリー食品を摂る人口が増大した結果、市場拡大に弾みをつけている。Gluten-freeは新たな成長分野として注目を集めている。

加えて、グルテンフリーダイエットが米国でブームになっていることも消費拡大を後押ししている。ゼネラル・ミルズやケロッグなどの食品メーカーは対応商品を増産し、外食チェーンは対応メニューを増やしている。米国で現地生産する亀田製菓「柿の種」もグルテンフリー・バージョンを販売。亀田製菓は、「グルテンフリー市場が確立されている米国では、表示があるかないかで売り場も変わってきます」と話す。日本でもグルテンフリーへの認識が徐々に高まりつつある。クックパッドのレシピサイトを見ると、200前後のグルテンフリー料理が並び、アマゾンでグルテンフリーレシピを検索すると15冊の書籍が出てくる。その他専用サイトには「グルテンフリーのパン教室」、「グルテンフリーの米粉麺」などファションのトレンドを追うかのような「人気」である。


    ※セリアック病(coeliac disease または celiac disease)は、小麦・ 大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患。
    ※このグルテンを含む食品を摂ると、免疫系が小腸の内膜を攻撃、内膜にある小さな突起にダメージを与え、小腸からの栄養分の吸収を阻害する。これにより、慢性の下痢、腹部の膨満感や痛み、貧血、疲労感などが生じる。

現在、アメリカでのセリアック病の患者数は約300万人と推定され、セリアック病ほど深刻な症状ではないにしろ、グルテンに過敏に反応するアメリカ人は2000万人を超えるとみられている。米国の人口全体の7%を占める。 FDAは「ノーグルテン」「フリー・オブ・グルテン」「ウィズアウト・グルテン」といった類似の表示の新規制を設け、グルテンにアレルギー反応を示す消費者が安心して商品を選べ、健康管理がしやすくなる取組みをすでに始めている。

前述の通り、米国でのグルテンフリー商品の2012年の売り上げ42億ドルで、2017年には60億ドルに達すると推定。パンやクッキーをグルテンフリーにするとどうしても味が落ち、食感もパサパサしてしまう。市場規模が急激に伸びる中、「さらにおいしく、食感の良い商品の開発」に注力することで日本企業にとっても大きなビジネスチャンスが開かれる。

意外だが、多くのグルテンフリー食品は含まれるビタミンや繊維が従来品より少なく、砂糖が多い。一部食品メーカーは、ヘルシーだとは主張せずに消費者の需要に応えているだけだとしている。そんな点からも日本の食品・食材メーカーにとっては米国市場に十分「つけいるスキ」があるのではないだろうか。

グルテンフリーの需要拡大に目をつけ便乗している食品会社は数多い。冷凍野菜「グリーン・ジャイアント」やチョバーニのギリシャ風ヨーグルトなど、小麦・大麦・ライ麦を含まない商品にもグルテンフリーの表示を付している。そのため、米国ではそもそも「グルテンを含まない食品を含むグルテンフリーと表示された商品」の売上高の伸びが加速し、人気に拍車がかかっている。

米国市場参入におけるキーワード:アレルギー

以下、大和薬品のワールドヘルスレポート「米国で需要高まるアレルギー対策商品」(2013 年8月)より一部抜粋し紹介させていただく。

米国喘息・アレルギー協会によると、アメリカ人の5人に1人がアレルギー持ちで、1980年代から年齢、性別、人種に関係なく上昇している。アレルギー別の罹患率では、花粉やほこり、カビなどへの過剰反応が大半で、それ以外では、アレルゲンに接触した際の皮膚炎の発症が全体の約7%、食品および薬によるアレルギーがそれぞれ全体の約6%を占めている。食品アレルギーの8大アレルゲンは、牛乳、大豆、卵、小麦、ピーナッツ、木の実、魚、貝類で、フードアレルギーの原因の90%を占めている。また、ペニシリン投薬によるアレルギー反応で毎年約400人が死亡し、食品アレルギーでは約200人が死亡している。

アレルギーの解決策に、代替療法を求める人々が増えている。米国でのアレルギーによる年間医療費は123億ドルといわれる。内訳をみると診療費が13億ドル、処方箋薬が70億ドル、市販薬が40億ドルとなっている。また、アレルギーを発症し、死亡または会社や学校を休むなどで経済に与える年間の損失は約22億ドルにのぼるといわれている。

市場調査会社グローバル・インダストリー・アナリスト(GIA)によると、アレルギー薬の市場規模は2015年までに147億ドル(約1兆5000億円)に膨れあがるとみられている。即効性のある抗ヒスタミン薬といった医薬品が売れ筋だが、ここ数年、医薬品の副作用を懸念してかハーブやホメオパシーといった代替療法にアレルギーの解決策を求める人々が増えているという。

どうだろうか。日本企業の出番があるように思えて仕方がない。

グルテンフリー市場を考えるファクト&キーフレーズ

◇ 売上は40億米ドルを上回り、2017年は66米ドルに突入
◇ グルテンフリーの大衆市場ではスナックバーが首位
◇ 冷凍・フレッシュパン製品の売上は2倍以上に
◇ 健康に良い、体重管理、炭水化物コントロールが主要な促進因子
◇ スナック/グラノーラバー、フレッシュパン・ロール、スープ、冷凍ディナー・主菜、パスタ・麺、クラッカー、クッキー、 冷凍パン・パン生地、コールドシリアル、ソルティースナック、ベーカリー製品と多種多様
◇ Walmart とスーパーマーケットチェーン店がグルテンフリー製品の売上の80%を占める
◇ グルテンフリー消費者の半数以上がパン/シリアル/穀物製品を購入
◇ グルテンフリーの自社ブランドを販売する小売業者
◇ ファストフードから高級料理まで、グルテンフリーに投資するフードサービス
◇ グルテンフリーをうたったメニューが40%増加し、「ホットトレンド」と見なされている
◇ レストランシェフのグルテンフリーに対する知識の不足は「憂慮すべき」かつ「ショッキング」な状態
◇ グルテンフリー食品を購入する消費者のシェアは徐々に18%まで上昇
◇ 3分の1以上がグルテンフリーをヘルシーだと考える
◇ グルテンフリー製品の4分の1以上がウエイトコントロール向け
◇ グルテンフリー消費者の5人に1人が炭水化物とグルテンフリーを同一視する
◇ 約5人に1人がグルテンフリーは高品質を意味すると認識
◇ ウエイトコントロールが女性にとっての動機付けとなり、品質が男性にとっての動機付けとなる

日本の食材は本来、成分的にも健康志向の高いものが多い。5人に1人がアレルギー持ちと言われる米国市場において、日本の食材をアメリカ市場にマッチする形で工夫を加え、微調整をすることで新たな新規マーケットを開拓でき、販路を拡販できる可能性が出て来るのではないだろうか?

毎年3月に米国アナハイムで開催されているNATURAL PRODUCT EXPO WESTはその市場の動向を見る上で格好の展示会である。2015年は3月6日〜8日の3日間、Anaheim Convention Centerで開催される。一度、視察されることをお勧めする。