2022年4月8日

日本とポーランドの架け橋に
〜美しくハーモニーのとれたメロディを聞いているような気持ちで旅行をしてもらいたい〜

日本からみてポーランドは未だなじみの薄い国と言えるかもしれません。しかしながら、両国の間には善意と友好の歴史が100年もの間、脈々と流れている事実を見過ごすことはできません。1920年、シベリアで困窮していたポーランド人孤児765名が日本の帝国陸軍と日本赤十字社によって救出され、母国ポーランドに送り届けられました。75年後、その返礼として1995年に起きた阪神淡路大震災の孤児たちは、ポーランドに招かれて歓待を受けました。
そんなポーランドと日本を繋ぎ、ワルシャワを拠点に旅行業を営むカミラ・パホさんに話を聴きました。カミラさんの会社、Melody Toursは日本からポーランドへの旅行手配の数においてポーランド最大を誇っています。
*インタビューはすべて日本語で行なわれました。


Kamila Pacho /カミラ・パホ
メロディーツアー 代表取締役社長

13歳の時、世界の子どもが集まるキャンプで初来日。ワルシャワ大学日本学科卒、ワルシャワ経済大学修士。メロディーツアー設立は2007年、最近は文化関連イベントや日本政府主催のシンポジウムの準備など、常に日本とポーランドの架け橋を目指している。二児の母で、ヨガ、瞑想、クロスフィットなどの趣味を楽しむ。

Melody Toursとは音楽を連想させますが、社名の由来からお聞かせください。

ポーランドはショパンの国として知られています。そのため、最初に”メロディ”を思いつきました。このメロディには4つの要素があります。弊社はその4つの要素を踏まえ、音楽を奏でるような旅行を提供したいと考えます。一つ目は色、カラーです。色とりどりの歴史や伝統をパレットに並べたようなカラフルなポーランドの旅です。二つ目はハーモニーです。お客さまにリラックスして遊んでいただけるように、ハーモニー、調和のとれた体験を提供できるように努力しています。三つ目はリズムです。効率もよく時間を守り、リズムのように正確で信頼のできる会社でありたいと思っています。最後四つ目はメロディです。お客さまには美しくハーモニーのとれたメロディを聞いているような気持ちで旅行をしてもらいたいと思っています。もしかすると出来過ぎかもしれませんが、これが日本のお客様に対して私が連想したイメージでした。

2007年の設立ということで、今年で15周年を迎えるわけですね。旅行の仕事以外にも新しい取り組みをされていると聞いていますが。

これまでポーランドにはビジネスのお客様もたくさんいらっしゃいました。以前からポーランドと日本の両方で、様々なビジネスの活動やアドバイスも行ってきました。しかし、パンデミック以降は、日本とポーランドの橋渡し役として多様なフィールドで幅広いサービスを提供するようになりました。日本やポーランド市場への進出に必要な調査、生産者や卸売・販売業者とのマッチング、手続き等に関すること、通訳・翻訳、ロジスティックスなどすべてのサービスを提供していきたいと考えています。もちろん、日本国内の信頼できるパートナーの協力があってこそ可能です。これまで200回以上のオンライン商談を企画し、企業間マッチングや商品紹介などのサービスを提供してきました。

カミラさんご自身、日本語を学ぼうと思われたきっかけは?日本に留学されたのでしょうか?

13歳の時に世界中の子供達が集まるキャンプがあり、それで日本に行くこととなりました。日本の文化、色、美しさに感動しました。当時ポーランドはまだ少しグレーなイメージだったので、この旅行が大変印象深かったです。それがきっかけで、ワルシャワ大学の日本語学科で勉強することになりました。それは私にとって人生で最高の決断でした。私は日本と永遠の絆で結ばれました。ただ、残念ながら日本に長く留学したことはありません。私は二つの国の協力に貢献できるようできる限りのことをしたいと思っています。

日本から旅行する人たちに、ポーランドの何を一番、経験・体験して欲しい、楽しんで欲しいと思われますか?

私たちはお客さまを暖かくお迎えし良い食事やホテル滞在を楽しんでもらえるよう、100%安心して任せていただける会社でありたいと願っています。お客様の多くは日本とポーランドは似ていると感じられます。新しい国での経験を楽しみながら、自分の国にいるような気持ちになっていただけるようです。ポーランドはショパン以外にも、心に訴えるアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館があります。他にも野生の動植物が豊かなヨーロッパ最高の森、ビーチや美味しい食べ物で有名な美しい海外沿いの街、たくさんの物語がある16ヶ所のユネスコ世界遺産、更に地元のフォルクラで知られる美しいタトラ山脈があります。これらの場所については弊社のインスタグラムで紹介しています。日本のお客様からは景色がイタリアのトスカーナやフランスのベルサイユのように見える、あるいはこれまで見たことがない風景だというコメントをいただきます。しかし、これば全てポーランドなのです。

Melody Toursの代表として、日本からの旅行者を受け入れる上で、何を一番心がけていらっしゃいますか。

最高レベルのサービスです。日本のお客様のニーズに特化した柔軟性のある対応、そして信頼して任していただけるように心がけています。あとはおもてなしの心です。常に日本の文化や習慣に注意を払い、例えば、シャワーでなくバスタブのある浴室といったリクエストやお客様のニーズを尊重した対応を心がけています。そして食事は味だけでなく、見た目も美しい最高の料理を提供したと思っています。日本のお客様のリクエストに対応できるよう基準を高く設定しています。もちろん、安全性が最優先事項です。

カミラさんにとって、「旅行におけるおもてなし」とは?

大切なことですね。実はポーランドは「おもてなしの心」で知られています。ポーランドの伝統でもあり特色でもあります。ポーランドの人たちは特に日本からの観光客の皆さんを暖かく歓迎します。ポーランドと日本の関係に良い感情をもっているからです。ホテル、レストラン、車、ガイド、全ての人がお客さまを大切にします。道ゆく街の人々でさえ笑顔で優しく迎えてくれます。ポーランドがヨーロッパで最も安全な国のひとつであることも重要な点です。

新型コロナの影響により、観光業界は依然厳しい状況下にあります。日本政府は観光業の立て直しのため、ウィズコロナを前提とした旅行ニーズの変化やデジタル化に対応した事業再構築に取り組もうとしています。また、ポストコロナ時代において、オーバーツーリズム対策や観光資源の保全をはじめとした持続可能な観光地経営が求められており、併せて、”サステナブル”な観光を体験したいという旅行者のニーズが高まっています。
さて、ポーランドでも”サステナブル”な観光を体験したいという旅行者は増えていますか?

ポーランドはまだそれほど増えておりません。私たちが大切にしていることは自然保護区を含む自然豊かな地域で自然を大事にすることを最重要視して自然に触れ合える観光活動を行うことです。村全体がペイントされたザリピエ村や、タトラ山脈の村の家など地元の人々や伝統的な生活様式や文化に触れて地域の食を楽しめる場所にゲストをお連れしています。エコツーリズムやホテルの代わりに田舎の農村での滞在も段々と人気が出ています。

(参照) 持続可能な観光(サステナブルツーリズム)とは、国連世界観光機関(UNWTO)の定義では 「訪問客、産業、環境、受入地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」とされている。

ポーランドにおける「サステナブルな観光コンテンツとはどんなものがあるのか?」 具体的に教えていただけますか。

ポーランドでは地元の人々や本物の自然と触れ合えるように心がけています。弊社が採用するレストランではポーランドの地元の生産者がつくる旬の食材を使った食事を提供しています。大都市以外では小規模ホテルを利用するようにしています。ポーランドの観光地としてまだ有名ではないところは重要です。地元の人々の新たな雇用を創出し地元のサプライヤーを支援することになります。お客さまにポーランドの本当の姿を見せることができるのです。

カミラさんは今後日本の旅行者にどんな旅行を提案していきたいと計画されていますか?

パンデミックによって日本からヨーロッパへの観光が大きく変わりました。今後も変わっていくでしょう。パンデミックがはじまり私たちの活動のほとんどがオンラインに切り替わりました。クラクフやワルシャワのオンラインツアーやアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館に関する講演も行いました。オンラインツアーは旅行を疑似体験できるためお客様からも大変好評でした。パンデミックが終わってからは、個人旅行やオーダーメード、少人数の旅行が増えていくと考えています。ポーランドの人気以外のところに行きたいという特別の目的のためのアドホックの旅行などです。この2年間は毎月1回、300以上の日本のお取引先にポーランドの知られざる名所や魅力を伝えるニュースレターを送っています。お客様から新しいトレンドやニーズについての情報を得ることが大切と考えるからです。私たちは典型的な観光ツアーではない、文化、歴史、フォルクラ、自然をベースにしたツアーやショパンの国でユニークな自然と景観、ロマンチックなお城、素晴らしい食事で結婚式をあげるという特別なイベントも企画しはじめました。実用的なワーケーションもまたその一つです。日中はオンラインで仕事を、夜はコンサートやバーで他のアトラクションによる観光をしたい人のための「仕事とワーク」、「旅行とバケーション」を組み合わせたワーケーションがあります。また、35歳から36歳前後の女性旅行者が急増しています。可愛らしく華やかな女性向けの可愛いポーランド企画も計画しています。

カミラさんの将来のビジョンについて教えてください。

私はメロディツアーを介して日本とポーランドの真の架け橋となり、両国の関係をサポートしたいと考えます。2019年には日本でポーランドのPRする文化イベント、ポーランド映画祭りやジャーナリストのピーターバラカン氏のポーランド訪問などのスポンサーにまたなりたいと思っています。更にポーランドの企業が日本で貿易や投資を行い、日本でポーランドの製品を紹介できるようにまた逆もできるようにして、メロディツアーはこの分野でも確固たる地位を築きたいです。これまでと同じようにお客さまに喜びをもたらす休暇を提供し続けたいと願っております。