アメリカ進出 基本アプローチ

アメリカ市場で「モノを売る」ことは、日本の消費者を相手に「モノを売る」こととは自ずと違ってきます。アメリカ市場で日本産商品を販売していくためには、アメリカを知ること、アメリカのマーケットを調査・分析することがその第1歩となります。

日米の違い

日本とアメリカの違いを概観してみましょう。

日本アメリカ
国土面積377,923.14平方キロメートル9,161,923.5平方キロメートル
人口125,930,000人
(2020年6月現在)
331,096,700人
(2020年7月現在)
GDP4兆9717億ドル20兆5802億ドル
民族単一民族国家多民族国家
歴史2000年以上244年(独立記念日:1776年7月4日)
社会単一言語・均質的社会多言語・多様性社会
資源資源小国資源大国
行動志向集団を優先個人を優先
移動手段公共交通機関自動車(一部大都市を除いて)
企業の数約421万社約593万社

アメリカの国土面積は日本の24倍、人口は2.6倍です。ちなみに、全米の中でも第1位の人口を誇るカリフォルニア州は3,954万人、面積は日本がすっぽりと収まる大きさです。消費意欲が旺盛なこのアメリカ市場に興味を持ち、新規参入を試みる日本企業は後を絶ちません。「チャンスの国 アメリカ」と呼ばれる所以でもあります。しかし、どの企業も成功を勝ち取れるわけではありません。様々な要因が指摘できます。米国市場の理解不足によるマーケットと商品のミスマッチ、ローカルフィットにおける調査・努力不足、人材不足、資金不足などが考えられます。

新規参入に伴う失敗事例

これらは基本中の基本といってもいいかもしれません。日本からお金をかけて準備して持っていった販促ツールなどがアメリカで無駄になってしまうケースをよく見かけます。

いくつか失敗事例を見てみましょう。

1. ビジネスカード
米国仕様の英語版名刺を用意すること。名刺のサイズは一般的に日本とアメリカでは異なります。日本の名刺はアメリカの名刺ホルダーにキチッと収まりません。収納するためには1枚ずつカットするか、あるいは、ファイルされない場合はそのまま忘れ去られてしまいます。名刺は必ずアメリカサイズ(縦51mm x 横88mm)で作成してください。また、展示会で使うときは、ブース用の名刺を用意するのも合理的です。ブース番号などを手書きでもいいので予め記入しておくと、バイヤーが後でブースに戻ってくるときに便利です。

2. 配布物
日本はA4サイズ、アメリカはレターサイズです。A4サイズはレターサイズより天地が長いため、名刺のときと同様、アメリカのファイルにキチット収納できません。A4で資料をもらった場合、折り曲げてファイルするか、ファイルされずにそのまま忘れ去られてしまうかのどちらかと言えます。事前に日本でハンドアウト用資料などを印刷準備するときは、レターサイズ(8.5×11インチ/約216×約 279mm)で作成してください。

3. 言語表記
日本人はカタログやパンフレットに日本語と英語が併記されていても余り抵抗がありません。日頃から英語を見慣れていて、ある程度わかるからで、余り違和感を覚えないといえます。一方、アメリカ人にとっては日本語なのか中国語なのか、単なる記号の羅列なのか、逆に肝心な情報を読み取ってもらえないケースが多いようです。アメリカでの配布物には、日本語とのミックスは避けていただくといいでしょう。
コピーや本文の翻訳は、英語ネイティブがダイレクトに行う翻訳方式(その後、日本人がクロスチェックを行う)が望ましいです。日本人が訳してその後にネイティブチェックを入れるより、より精度の高い自然な英語となります。「餅屋は餅屋」で、社内で対応できない場合は、専門の会社に依頼されることをお奨めします。英語が不自然だと商品もそのように判断されかねません。

4. 英語サイト
ウエブサイトの必要性は失敗事例というより、事前に英語でのウエブサイトを用意しておかないと進出努力の効率が悪く結果が伴いづらい点が指摘できます。展示会の来場者は事前に出展者情報をウエブサイトから収集するケースが圧倒的です。自社ブースに立ち寄ってもらえるかどうか、英語のウエブサイトを充実させることは重要です。そして、情報を更新し、常に情報発信していくことが大事です。

5. 事前調査・視察 → 展示会出展
とりわけ、中小企業の経営者の方に多いのですが、いきなり展示会への出展を希望される場合があります。「自社商品の手応えを探ってみたい、アメリカでどう評価されるか肌で感じてみたい」と言われます。アメリカの展示会は、文字通りTrade Showで具体的な注文を獲得する場です。その前段階として、アメリカでのビジネスの準備と基盤整備が必要となります。いきなり出展ではなくて、先ずは事前調査・視察をお奨めいたします。

現地をつぶさに視察され、競合他社の商品群を見ていただくことで、おおよその自社商品の市場性なり可能性を把握いただけるものと考えます。視察によって、次なるステップが見えてきて、展示会への出展も具体的となってきます。アメリカとそのマーケットを鳥の目(俯瞰し)、虫の目(真近に手に取って)、魚の目(複眼的に)をもって見ることです。