2014年5月30日

「南マルマラ地域」駆け足訪問レポート

南マルマラはトルコ西部に位置する。Foodex Japan 2014のトルコのナショナルブースに南マルマラ開発機関(South Marmara Development Agency)が食品企業に混じってブースを構えていた。同地域の牛乳の年間生産量は181,000トンとトルコ国内で第一位を誇る。鶏肉は210,000トンで第2位。更に、国内第3位の生産量を誇るのが、オリーブ205,000トン、卵13億個、米181,000トン。農畜産分野が強い。食品だけでなく、南マルマラ地域には有数の温泉地もあり観光資源が豊富である。バルケシル(Balikesir)とチャナッカレ(Canakkale)の二つの県には投資支援事務所を設置し、日本企業に向けた誘致活動にも熱心に取り組んでいる。今回、イズミールから同機関のあるバルケシルに車で向かった。2時間の旅であった。

バルケシル

マルマラ海とエーゲ海の両方に接するバルケシルは、自然に富み史跡が多い。マルマラ島は、ビザンチン帝国、オスマン帝国の時代には大理石で大いに栄え、マーブルビーチと呼ばれるビーチもあるほど。海岸線が鮮やかで水が透き通っている。ぶどう園やワインセラーを訪ねる人も多い。この地域は温泉でも有名。ギョネンという町は、トルコでも有数の温泉町で、ここの温泉はローマ時代にも使われ、当時5世紀のモザイクが残っている。温水は地下500メートルから湧き出て、82℃ほどの温度。また、バルケシルと言えば、トルコ伝統手織り絨毯のヤージベディルが有名。ヤージベディルはエーゲ海地方の半遊牧民によって織られてきたもので、紺色をベースに4~6種類の限られた色を使い伝統の柄をずっと繋いできた。絨毯は織られた毛並みの方向やツヤによって色の見え方が変化する。ヤージベディルの絨毯はもっとも珍重され、使えば使うほど愛着が出るとのことで日本人愛用者も多い。

YORSAN FOOD

Yorsn社の製品が中心に置かれているスーパー

日本には(株)バハールがYorsanのフェタチーズ(牛乳・羊乳)やラブネチーズを輸入している。フェタチーズ(牛乳)はトルコの朝食には不可欠なアイテム。日本の食卓では、サラダの具や料理に混ぜたり、オリーブオイルをかけておつまみとして食されている。

楽天のサイトを見ると、焼いて食べるYorsanのヘリムチーズが紹介されている。「一度食べたらクセになる!」と謳っていて、食べ方を紹介している。包丁でチーズを切って、そのままフライパンで焼き、そのまま食べるか、野菜やパンに挟んでサンドイッチにする等何通りかの食べ方を提案している。日本でトルコの食材・食品の消費を増やして行くためには、一にも二にも思わず食べたくなるメニューやレシピ開発を進めることが大事。一般消費者だけでなく、流通関係者も美味しい料理の仕方と食べ方を学び、それを広めていくことは言うまでもない。

この後向かったのは、この日の宿となるAdrina Hotel De Luxe Health & Spaである。エデレミットに位置する5つ星リゾートで、北エーゲ海の海岸を望むことができる。部屋の外にはプールや公園、海も目の前で朝の散歩には最高のロケーション。エーゲ海に沈む夕日と登る朝日がみられる。今回、ゆっくりできる時間がなく、ホテル内の施設が利用できなかったのは返す返す残念であった。

チャナッカレ

チャナッカレと言えば、筆者のイメージはチャナッカレ大学の日本語教育である。優秀な何人ものトルコ人卒業生が日本で活躍している。トルコで初めて日本語教育が行われたのは、1976年のことらしい。1993年にチャナッカレ大学教育学部に日本語教師の養成を目的とした日本語教育学科が開設され、その後、日本語を専攻とする学校の数が増えていったという。

さて、チャナッカレの街は、1200メートルの狭いチャナッカレ海峡の入り口にある。この海峡はエーゲ海とマルマラ海を結んでいる。毎日カーフェリーがアジア側のチャナッカレとヨーロッパ側のエジェアバットとキリトバヒルを結んでいる。トゥルワ(トロイ) は、ホメロスの物語で有名で、考古学者らによって9つの時代の集落や城壁、寺院、劇場が発掘されている。伝説のトロイ戦争を記念して、トロイの木馬が立てられている。

そのチャナッカレに向かう途中で、企業をいくつか訪問した。

Laleli(ラーレリ)のオリーブオイル

農園の経営者であるラーレリ博士が栽培から製造まで手がけた高級オリーブオイル。日本にも東急ハンズやロフトなどに卸している。コンクールでも数多く賞を受賞し「軽やかなフルーツの風味を持ち食欲をそそるオイル」との評価が高い。ラーレリ家の農園は地中海に面していて、まだ実の青いうちに収穫したオリーブの実を自社工場で搾油する。まだ熟していないオリーブの実を搾ることでピリッとしたスパイシーさとフレッシュな風味を出せるという。特にサラダやカルパッチョなどの料理に合うという。筆者もいろんな味のオリーブオイルを試飲し、パンにもつけて試食もしたが、レモン味がすっきりしてこれが一番と伝えたら、やはり日本での売れ筋もレモン風味のオリーブオイルが一番とのことであった。

Laleliの担当者とは店舗で会って話しを聞いた。オリーブオイルやオリーブ等の自社製品を販売している店舗内にレストラン&カフェがある。上の写真にあるシャンデリアらしきものはオリーブオイルが入った瓶の数々である。

次の訪問先に向かう途中、山越えをした。山頂から海を望む美しさはまさに絶景で、その頂で味わうチャイも格別。オリーブオイル、オリーブなどを売る露店がところどころ軒を連ねている。オリーブオイルの伝統的な生産国であるトルコは、6000年の歴史を誇るオリーブオイルの「ふるさと」である。近年は、新しい栽培手法や搾油システムの導入によって作付面積を拡大し、生産量の増大を図ることで国際市場のトップ3、やがてトップ2に躍り出たいとしている。そのためには、トルコ産オリーブオイルの輸出マーケットでの認知度向上が一層強く求められ、これまでの「バルク原料供給国」から、「高品質ブランド品生産国」へのシフトがトルコ生産者の課題と言われている。

リンゴメーカー

次に出向いたのはリンゴを扱うKepez社。甘くて美味しかった。リンゴの生産量においてトルコは世界第3位。恐らく、そのことを知っている日本人は少ないと思う。リンゴの生産量だけをみれば、中国がダントツで年間約3700万トンで全体の5割を占めている。2位はアメリカで412万トン。3位のトルコは289万トンの生産を誇る。味と品質において絶対的な人気と存在感を発揮している日本は生産量では17位にランクイン。トルコとほぼ同じ生産量がポーランドだ。

りんごと言えば、アダムとイヴの物語にも登場する歴史ある古い果物。紀元前6000年頃にはすでにトルコでも登場し、紀元前1300年にはエジプトで栽培されていたといわれている。日本での本格的なりんごの栽培は明治以降。

トルコの工場を訪問すると、それが食品であれアパレルやテキスタイル、レザーであれ、日本でも見ることのない先進的な機械が使用されていることが多い。トルコとドイツの歴史的関係がその背後にある。

戦後、トルコ政府はドイツとの間に雇用双務協定を結び、受け入れ国であるドイツ側の需要に応じて、労働者を送り出してきた歴史がある。300万人以上のトルコ人がドイツに住んでいるという。つまり、ドイツは戦後復興に際して、戦争による若年労働力の不足の解消を目的として移民を受け入れたのである。一方トルコは、①国内での失業問題の解消、②海外へ出稼ぎに行った労働者による本国への送金によって貿易収支での赤字を補填、③派遣労働者が帰国することで、トルコの発展に必要な知識と経験、西欧での労働慣行を国内にもたらす、④西欧でのテクノロジーと社会的な価値観を国内に持ち帰ることによってトルコの社会的発展に貢献しうる、⑤労働者が技能を身に付け、出稼ぎで蓄積した資本をもとにトルコ国内に新たな産業を興すことを目的、として労働者を送り出したのである。

そんな背景ゆえ、ドイツからもたらされたソフト&ハードをこういったリンゴ工場において垣間みることができるわけである。

BEST Transformers ~Your Best Partner in Power Projects~

「電力事業のベストパートナー」を視察。国内最大という電力変圧器の生産者、BEST Balikesir Electromechanical Industrial Plants Corporationである。1966年の設立で従業員数は715名。50kVAから800MVA, 400kV と600MVA, 525kVを扱う。

BEST自慢のトルコ最大のテストラボとケミカルラボ。

今回の視察の最後に南マルマラ開発機関のチャナッカレ事務所に立ち寄った。港の前に事務所が入っている建物がある。トロイの木馬も目の前にある。トルコには世界遺産が13ある。文化遺産が11、複合遺産が2つ。二国間において「観光」は最も分かり易く交流促進を進め易い分野である。南マルマラ開発機関は、「観光」に加え、「貿易・投資」を加えた三つの分野において日本とのバランスの取れた相互乗り入れの活性化を目指している。